ものがたり珈琲、平岡代表にインタビュー!
毎月テーマに合わせて作られたオリジナルのコーヒーと小説がセットになって届くサブスクリプションサービス「ものがたり珈琲」。
「1杯のコーヒーがあなたの日常に物語を描く」をコンセプトに、コーヒーと小説のマリアージュが楽しめるこれまでにないサービスとして注目を集めています。
今回サブスクチョイスでは、「ものがたり珈琲」を運営している株式会社絆家代表の平岡雅史(ひらおかまさし)さんにインタビューを実施!
サービススタートに至るまでの背景や、「ものがたり珈琲」にかける想いなどを伺いました。
サービスの詳細については、次の記事からご覧いただけます。
ものがたり珈琲の口コミは?評判・解約・料金などコーヒーと小説の体験型サブスクを解説
サービスを始めたきっかけ
―まずは「ものがたり珈琲」をはじめたきっかけを教えてください。
「ものがたり珈琲」は2021年1月にクラウドファンディングを実施し、同年2月にサービスがスタートしました。
きっかけとなる出来事としては、少し遡りますが学生時代にコーヒーチェーンの「ドトール」でアルバイトをしていた経験が大きかったと思います。
その頃からコーヒーが好きになり、今でも毎日4~5杯は飲むほどです(笑)。
ただ、スペシャルティコーヒーに限って飲んでいたり、豆の産地にすごくこだわりを持っていたりというわけではないんですよね。
いわゆる「うんちくを語る」ようなタイプではなく、カフェチェーンのコ-ヒーはもちろん、コンビニのカップコーヒーなども含めて楽しんでいます。
コーヒー業界では、豆の産地や品質、スペシャルティコーヒーかどうかがフォーカスされがちですが、「こだわりはもってないけど、毎日コーヒーを楽しんでいる」という人は、自分もそうなんですが、コーヒーを飲む前に「こういう気分になりたいな」という気持ちがまずあると感じたんです。
例えば、「ゆっくりと落ち着いて考え事をしたい時」とか「大切な人とゆっくり話したい時」とか。
そんなシーンがあってコーヒーを淹れようと思う部分も大きいのかなと。
コーヒーはジュースなどとは違って、日常とは少しだけ違う特別感を演出できる飲み物だと思うんです。
いちコーヒーユーザーとして、そういった色々なシーンに合うコーヒーを提案してくれたら嬉しいなと考えたのが「ものがたり珈琲」を始めるきっかけでした。
―確かに身近なシーンに合わせてコーヒーが提案されるのは、ライトユーザーはもちろんコーヒー初心者の方にとっても入りやすいタッチポイントですよね。その後はどのようにプロジェクトが進んでいったのでしょうか?
絆家ではコンセプトシェアハウスの運営もしています。
その中には「本とコーヒー」をテーマとした「hitotoki」(大阪・帝塚山)というシェアハウスもあるのですが、メンバーの中には、バリスタの方やカフェのオーナーさんなどもいて。
その方たちと、シーンにフォーカスしたコーヒーのアイディアを共有するなかで、サービス提案が具体化していきました。
そういった話をしていたのは今から3年ほど前(2019年頃)になるのですが、2年越しに実現した形です。
コーヒーと小説のペアリングという新提案
―コーヒーと小説をセットにしている点が特徴的ですが、小説との組み合わせに着目した理由を教えてください。
「コーヒーを受け取った人の日常が少しでも動くような体験を提案したい」という想いがありますね。
小説の中では主人公がコーヒーを飲んでいるシーンが出てきます。
必ずしもそのストーリーと同じ追体験をして欲しいというわけではないのですが、小説の物語が背中を押すことで実際にアクションを起こすきっかけになればと。
それは例えば、大切な人に手紙を書いてみたりだとか、当たり前な毎日に感謝ができたりだとか。
「コーヒー1杯が心の処方箋」になるように、小説(物語)によってビジュアライズされたシーンを通じ、一人ひとりの日常を動かせられたらと嬉しいなと思います。
―特にそれを届けたい人、ものがたり珈琲がメインターゲットとする層はどんな方ですか?
メインターゲットは、毎日仕事や家事を頑張っていらっしゃる会社員や主婦の方ですね。
今は時代的にもサービスが豊かになり、とても過ごしやすく便利な世の中になりました。
また、あらゆるところで、自分の好みに合うサービスやコンテンツを自動的におすすめしてくれますよね。
ただそれは、自分がこれまで選んできたものに対して、つまり過去の自分の延長線上にあるものだと思うんです。
便利な側面はもちろんありますし、私も日々そんなサービスに恩恵を受けていますが、個人的には意外性だとか、驚きのある商品と出会う可能性・選択肢は少なくなってきていると感じています。
「ものがたり珈琲」では、ユーザーが小説やコーヒーの種類を自分で選ぶことは出来ません。
自分で選ばないからこそ、過去の自分の延長線上にはない商品・サービスとの出会いによって、その人にとっての新しい発見や、日常の変化につながると思っているからです。
例えば、「#懐かしさを手紙にのせて」のブレンドと一緒に、何年かぶりに大切な人に手紙で感謝を伝える機会を持てたとか。
「#朝焼けと共に1日のはじまりに」のブレンドが届いたから、いつもより1時間早く早起きしてみようとか。
いつもの日常に大切な人と繋がり直す体験や、大切なことに気づき直すきっかけを届けたいと思っています。
“便利”が日常的なミレニアム世代・Z世代の方にこそ、意外な発見やサプライズ体験を提供していきたいです。
―そのような新しい提案を行うにあたり、苦労した点などはありますか?
一番はサービスのコンセプトを消費者の方にうまく伝えていくという部分でしょうか。
「コーヒーと小説のペアリング体験ってどういうこと?」「『ありがとうの気持ちと共に』のブレンドコーヒーってなに?」とか、そんな疑問を持たれてしまうことも多々あって…。
便利なものに慣れている方にとっては、「自分でコーヒーや小説が選べるわけではないんだ」と思われてしまうケースもあります。
初めて「ものがたり珈琲」を知った方に、サービスの価値を知ってもらうということに、いつも四苦八苦していますね(笑)
そこは実際に体験してみて初めて感じてもらえるものだと思いますし、HPを見ただけでは伝わりきらない部分だと思います。
だからこそ、SNSでのユーザーのリアルな声や時にはアンケートに協力いただきながら、どこに一番価値を感じていただけたのか、コーヒー体験によってどう日常が変化したのかなど、たくさんの意見から、価値の伝え方を日々試行錯誤している段階です。
サービスのこだわりポイント
―毎月のテーマ選定はどのようなこだわりがありますか?
毎月のテーマは、先ほどお話したように「心の処方箋」というような切り口で選んでいます。
毎日頑張って仕事をされている方たちに対し、少しだけ立ち止まってなにかを考えるきっかけになるようなことを考えている感じです。
選定は私自身で行っているのですが、自分自身がこんな時間があったらいいなっていうのも大きな判断材料にはなります。
コーヒー1杯に意味を持たせて、ただ消化するのではなく、大切なものに気づく時間を添えて届けられたらという想いです。
―そのテーマに合わせてコーヒーをブレンドされているわけですが、具体的にはどのような作業になるのでしょうか。
コーヒーのブレンドはバリスタの粕谷 哲(かすや てつ)さんが行ってくれています。
「このテーマならどんな味わいになりますか?」などと話しながら、パッと思いつくものもあれば、結構悩むものもあって…。
まぁその悩んでいる過程が楽しかったりもするのですが(笑)。
実際にブレンドする際は、コーヒーの味わいを表すフレーバーホイール(※)を参考にしています。
※アメリカのスペシャルティコーヒー協会(SCAA)が公開している、コーヒーの味を表すチャート。
出典:https://sca.coffee/research/coffee-tasters-flavor-wheel
コーヒーの味わいは、このフレーバーホイールをもとに色で分類されているのですが、設定したシーンごとの気持ちを色で考えブレンドを行っています。
例えば「懐かしさを手紙を添えて」というテーマだったら、「懐かしさ=セピア色」のような感じですよね。
その場合は、茶色や黄土色のコーヒー豆の中から選択してみます。
セピア系の色に分類されるコーヒー豆は特徴的に深い味わいが多いので、純喫茶にも出てくるような濃く深い味わいになり、なんとなく「懐かしむ」と繋がってきますよね。
「新しい旅立ち」というイメージであれば、逆に明るい色のコーヒー豆を選択し、浅煎りでフレッシュな味わいにするといったような感じです。
―非常に面白い作り方ですね。そんな粕谷さんとはどういった出会いだったんでしょうか?
シェアハウスに住んでいた方を通じて知り合いました。
実は粕谷さんは、病気をきっかけにコーヒーに目覚め、バリスタの道に進んで3年で世界チャンピオン(※)になられたすごい方なんです!
そんな出会いの中で、「ものがたり珈琲」をご一緒することになりました。
※世界大会「WORLD BREWERS CUP」(ワールド・ブリュワーズ・カップ)で、2016年にアジア人初の世界チャンピオンに。
―小説についてのこだわりも教えてください。実際に小説を執筆されているのはどのような方たちなんでしょうか?
書籍等を出版されている方もいらっしゃいますが、「note」とかで日常をエッセイとして発信されている方もいらっしゃいます。
「ものがたり珈琲」はあくまでも日常に即したシーンを提供したいと考えていますので、SFとかサスペンスのような非日常的なジャンルはありません。
なので、誰かにとって共感できるシーンを描いた内容となっているものが多いです。
自分たちの身近なシーンを描くことに対して共感してもらえる方にアプローチし、執筆をお願いしています。
昨年は、ソニーミュージックさんが運営している「モノガタリードットコム(monogatary.com)」という小説投稿サイトとのコラボも実施しました。
「モノガタリードットコム」で実施された「一杯のコーヒーが人生を変える」というテーマのコンテストでグランプリに輝いた作品をもとにコーヒーを作り、「ものがたり珈琲」の商品として実際にお送りした形です。
ものがたり珈琲の新たな取り組みと今後の展望
―サービスを開始して1年が経ちましたが、今年はどのような施策を行っていく予定ですか?
1年目はサービスの価値をいかに伝えるかを試行錯誤した年でした。
これまでは会員さんとSNSを通じて繋がるケースが多かったですが、今年はリアルな接点を増やしていきたいです。
そういう意味では、ポップアップ・ストアを出店してリアルでのイベント開催に取り組んでいます。
ストアでは、テーマに合わせたコーヒーとともにスイーツや食事を提供したり、小説の展示販売を行ったりもしました。
長くサービスを利用してくれている方も遊びに来てくれるので、実際にお会いできるのはとても嬉しいです。
また、「購入はしてないけど気になっていた」という方もいらしてくれて、そこから実際に会員になって頂いたケースもあります。
なので、ポップアップは今後も定期的に続けていきたいです。
また喫茶店・カフェとコラボして、「ものがたり珈琲」のメニューを置いて頂くということもしています。
引き続き提携先を増やしていくなかで、その月限定のコーヒーを出していけたら面白いなぁとも考えているところです。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。それでは最後に、一言サブチョイ読者に向けてメッセージをお願いします。
「ものがたり珈琲」は全く新しいコーヒー体験だと思っています。
コーヒーと小説を通じ、その先に皆さんがいつもとは違う選択・アクションを起こすきっかけとなれたら嬉しいです。
なかなか言葉では伝わりにくい部分だと思いますが、是非コーヒーと小説のペアリングを体験してみてください!
株式会社絆家 代表取締役 平岡雅史
2021年2月、コーヒーと小説をセットにした新感覚の体験型コーヒーのサブスク「ものがたり珈琲」をスタート。
日常のシーンと気持ちに寄り添ったテーマをもとにしたオリジナルコーヒーと小説を毎月セットで提案。
ブレンドの監修には2016年に世界No.1バリスタに輝いた粕谷 哲氏、イラストデザインはカタユキコ氏、小説は年間24名の小説家による書下ろしを、東京・蔵前にある「自由丁」を手掛ける小山将平氏が監修。
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